コチラの記事で紹介した通り、男性の薄毛の大半(9割)の原因である男性型脱毛症(AGA)の次に重要度が高い要因と考えられているのが、「血行不良」です。
そして、その記事の中で
医学教育に大きな貢献をしたウィリアム・オスラー博士は「人は血管とともに老いる」という有名な言葉を残していますが、これは「人の老化=血管の老化」であり、「血管の老化=動脈硬化」であるということを意味しています。
と記載しました。
そこで私は「動脈硬化と薄毛は本当に因果関係があるのだろうか?」という疑問が浮かんだので、本記事では、その疑問に対する答え、および「そうであるならば、それを改善するためには何が有効なのか?」に対してまとめました。
ちなみに、私は20代後半から生え際の薄毛に悩み、10年ほど薄毛対策に帆走した結果、おかげさまで薄毛を改善するに至っています。
■ もくじ
1.薄毛と動脈硬化の因果関係
2.動脈硬化の発生メカニズムと原因
3.動脈硬化を防ぐためには
まとめ
目次
1.薄毛と動脈硬化の因果関係
欧州心臓病学会のプレスリリースに、インド・グジャラート州にある国連医科大学メータ心臓病研究所のカマル・シャマル医師らのチームが行った以下研究結果が発表されています。
40歳以下の冠動脈疾患を抱える790人の男性と、比較対照として同じ年齢の健康な男性1270人を対象に研究を行った。
対象者を「毛髪の抜け具合」でグループ分けし、心電図、血液検査、冠動脈造影検査などを行ない、症状を点数化。
その結果、
(1)冠動脈疾患を抱える男性は、健康な男性に比べ、「薄毛」の率が高く、比率としては49%対27%だった。
(2)症状の点数が高い(悪い)人ほど毛髪が少ない。
(3)総合的には、冠動脈疾患のリスクは「薄毛」の人がそうでない人に比べ5.6倍に跳ね上がる。ということがわかった。
それまでの研究では、冠動脈疾患に最も強く相関したのは「肥満(健全者対比リスク4.1倍)」であったため、「薄毛(健全者対比リスク5.6倍)」がそれを上回る結果となった。
ちなみに、冠動脈疾患という言葉は聞きなれないですが、言葉の意味を紐解くと、
冠動脈疾患とは
冠動脈疾患とは、心筋の酸素不足により胸痛発作が起こる病気です。動脈硬化症が原因で血管の内側が狭窄して心筋への血液の供給が減少したり、血流が途絶えることによって、心筋が必要とする酸素需要量と動脈血からの酸素供給量のバランスが崩れ虚血状態となり、心筋は酸素不足となります。
とあるため、ここでは分かりやすく冠動脈疾患の主な原因となる「動脈硬化」として表現していきます。
つまり、薄毛の人ほど動脈硬化になりやすいとも言える研究結果なのです。
いや、どちらかと言えば、動脈が硬化している人ほど、薄毛になりやすいとも言えそうです。
研究はまだ始まったばかりとのことですが、動脈硬化を促す「脂質異常症(血中コレステロールや中性脂肪の増加)、高血圧や糖尿病など」を抱える人が、薄毛にも肥満にもなり易いというのは、考えてみれば納得できそうな気がします。
2.動脈硬化の発生メカニズムと原因
薄毛と動脈硬化の因果関係を示す研究結果を紹介しました。
薄毛に悩む方であれば、「だったら、動脈硬化にはなりたくない、出来れば防ぎたい。」と思うかもしれません。いや、健常者でも思うことでしょう。
そのために、動脈硬化の発生メカニズムと原因について、簡単に押さえておきましょう。
動脈硬化の発生メカニズム
一般には、血管の内皮細胞が何らかの原因で傷つき、それによって生じる炎症反応で起きると考えられています。
- 血中のLDLコレステロールが多いと、内皮細胞の損傷した部分から内皮細胞の内側にLDLコレステロールが入り込みやすくなる。
- 内皮細胞と血管壁の間に入ったLDLコレステロールが酸化されて、体に必要の無い酸化LDLへと変化する。
- 毒性を持つ酸化LDLは、排除すべき異物とみなされ、免疫細胞のマクロファージに食べられる。しかし、マクロファージが処理できる量には限度があるため、酸化LDLが過剰にあると食べきれずに死滅する。
- 血中にLDLコレステロールが多い場合はこの反応が繰り返され、内膜の内側でこの「プラーク」(マクロファージが死んでできた、かゆ状のもの)が肥大化していく。
- さらにこの際、「線維化」と呼ばれる、組織が硬くなる現象が起きるため、動脈の柔軟性が失われてしまう。
上記のように、動脈硬化は主に血中のLDLコレステロールがその起点となるため、脂質異常症によるLDLコレステロールの増加が大きな要因となりますが、ほかに以下のような原因もあげられます。
- 高血圧
- 糖尿病
- タバコやアルコール
- ストレス
- 加齢
3.脂質異常症の原因と対策
動脈硬化は、主に脂質異常症によるLDLコレステロールの増加が大きな要因という事でした。
それでは、脂質異常症は何によって引き起こされるのでしょうか?
脂質異常症の主な原因は、「高カロリー・高脂肪の食事」と「運動不足」であり、事実、「脂質異常症の8割は生活習慣病」とまでいわれています。
よって、まず必要なのは食事面でのコントロールです。
食事
すっかり欧米化して肉食中心になってしまった現代日本人の食事は、肉食中心の高カロリー、高コレステロール化しており、エネルギー過多になりがちです。
食事の問題点を挙げればきりがありませんが、中でも一番の問題となっているのはトランス脂肪酸の摂取です。
トランス脂肪酸とは
常温で液体の硬化油(植物油や魚油)から、半固体又は固体の油脂を製造するための、「水素添加」という加工技術があります。硬化油に水素を添加することで不飽和脂肪酸の二重結合の数が減り、飽和脂肪酸の割合が増え、半固体又は固体化します。この水素添加の副産物としてトランス脂肪酸が生成されます。
これに関しては、世界保健機関(WHO)が、マーガリンなどに含まれる「トランス脂肪酸」を2023年までに世界の食品から一掃することを目指すと発表しています。
アメリカの連邦政府は2006年にトランス脂肪酸の含有量の表示を義務化し、アメリカ全土で部分水素添加油の食品への使用禁止規制を2018年6月18日から開始しました。
またお隣のカナダでも同様に、2018年9月より部分水素添加油規制の法律が施行されています。
このトランス脂肪酸は、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング(植物油を原料としたクリーム状の製菓・調理用油脂)や、それらを原材料に使ったパン、ケーキ、ドーナツなどの洋菓子、スナック菓子、フライドポテトなどの揚げ物などに含まれています。
(食品包装の裏に書かれている成分表示で言うと、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、食用植物油、加工油脂と表示されているものにトランス脂肪酸が含まれています。)
「水素添加」加工することで、目的に合う食用油脂を安価に製造出来るため、企業によってはとても有益な技術なのですが、その反応の副生成物として生成されるトランス脂肪酸には、以下のような問題があります。
トランス脂肪酸の悪影響(農林水産省のHPより)
2002年に開催された「食事、栄養及び慢性疾患予防に関するWHO/FAO合同専門家会合」の報告書(2003)では、肥満、2型糖尿病、心血管疾患、がん、歯科疾患、骨粗しょう症に対する食事及び栄養による影響に関する証拠を検証し、それらの疾患を予防するための勧告を行っています。
その中で、トランス脂肪酸については、飽和脂肪酸、塩分のとりすぎ、過体重、アルコールのとりすぎとともに、心血管疾患、特に冠動脈性心疾患のリスクを高める確実な証拠があるとされています。
その具体的な証拠としては、次の事項が記載されています。
代謝研究で、トランス脂肪酸は血液中のLDLコレステロールを飽和脂肪酸と同様に増やすだけでなく、HDLコレステロールを減らすため、飽和脂肪酸よりも血液の脂質プロファイルをアテローム性(動脈硬化などの原因となる)に変化させることが示されている。
いくつかの大規模コホート研究では、トランス脂肪酸の摂取は冠動脈性心疾患のリスクを増やすことが示されている。
より広い視野から全体を見下ろすと、
- そもそも欧米化が進むことで脂質全体の取り過ぎとなり食生活が偏っている。
- 脂質の中には、飽和脂肪酸(常温で個体)と不飽和脂肪酸(常温で液体)がある。
- 不飽和脂肪酸の中には、シス型とトランス型(トランス脂肪酸)がある。
- シス型は天然で存在するが、トランス型(トランス脂肪酸)は上記で説明した通り「水素添加」という加工技術で生成され、問題視されている。
ということです。
また、化学的に作られた食品や食品添加物は、体外に排出されづらいので、摂り続けていると有害物質として身体に溜まり続ける点も、無視できない事実です。
運動
エスカレーターやエレベーター、動く歩道など生活が便利になったこともあり、現代人は運動不足気味です。
厚生労働省では、「脂質異常症を改善するための運動」として、以下のように推奨されています。
運動療法は、脂質異常症患者だけでなく健常者においても、血中トリグリセライドレベルを低下、HDLコレステロールレベルを増大させ、血中脂質値に好影響を及ぼします。「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版」では、以下のような運動種目・時間・頻度・強度の運動療法を推奨しています。
運動種目
有酸素運動を中心とした種目として、ウォーキング、速歩、水泳、スロージョギング(歩くような速さのジョギング)、自転車、ベンチステップ運動などの大きな筋をダイナミックに動かす身体活動。
運動時間・頻度
1日の合計 30分以上の運動を毎日続けることが望ましい(少なくとも週3日は実施すること)。また、1日の中で短時間の運動を数回に分けて合計して30分以上としてもよい(例:10分間の運動を3回実施で合計30分間)。
まとめ.
東洋医学において『髪は血のあまり』と言われることもあり、その『血』の質を高めること、および『血の通り道である血管』を健康に保つことが大切になります。
特に食事においては様々な論点があるため、ここではその中でも最も影響が大きいと考えられる脂質、中でもトランス脂肪酸に着目してお伝えしました。
しかし、難しく考えずとも
- 野菜、果物、大豆食品、魚海藻を多めにとる
- トランス脂肪酸が含まれるスナック菓子、マーガリンなどの摂取を控える
そして、適度な運動を継続する。
特段難しくもない昔ながらの生活を続けることが、髪にも体にも良い影響を与えるということに繋がります。
若いうちは分かりにくいですが、80才までいくと健康年齢に最大±20才の差が生じるそうです。
80才になっても、60才同様の若々しさを保って生きられるのであれば、年相応に老けていった方と比べてどれだけ日々を幸せに過ごせるでしょうか。
是非、これを機に自分の体と、健康と向き合ってみることをおすすめします。
それでは、本日もお読み頂き誠にありがとうございました。
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